約 834,596 件
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/1741.html
ジリリリリリ、といつもの音が耳に響き渡る。 それは何百回と聞き慣れた音で、何百回も繰り返された合図。 その合図を忘れることなく、毎日繰り返し続ける働き者だ。 俺はその働き者に対して恨みを込めるかのように、勢いよく右手を叩きつける。 今日の仕事は終わりだと告げ、また明日働いてくれるために。 厄介な恨めしいそいつの大半を占めている、円形に並べられた12の数字。 野太刀と小太刀くらいに違いのある二つの鋭い針が指し示していたのは。 「うわ…………そういや今日は休みじゃねぇか………」 8時2分。 いつものように俺が大学へ行くために起床する時間。 だが、今日に限ってはそれは間違いだった。 創立記念日。 カレンダーには一切ない、その大学だけの休日。 それが今日、だった。 「くっそ、ちゃんと確認しとけばよかった……」 後悔は先に立たず、という言葉が頭をよぎったが今はそれでさえ恨めしい。 前日の自分に戻って今すぐでも"明日は休みだ"と伝えたくなるほどに。 ただ残念ながら、俺はそんな能力をもつ人間ではない。 大人しく諦めて布団に入り直す。 「…………………眠くねーよ!」 一人叫ぶ俺。 休日は昼まで寝て過ごすというのが日課なのだが、今日に限ってそんなことはなかった。 平日は平日、休日は休日なのだと頭と体が認識してしまっているのか、全く眠くならない。 お目覚めぱっちり、実に清々しいことである。 さらに叫んだことで更に頭が冴えた。 近隣の皆様には実にご迷惑をおかけすることだけれど。 特に隣の住人には壁ドンされても文句は言えないだろう。 今回は幸いにして、何の反応も返ってこなかった。 「仕方ないか………」 眠れないときによくやるアレを実行することにした。 いつもと違う状況だけど、いつも通りなら眠れるだろう。 そう期待して、俺は準備に取り掛かることにした。 まだ誰もいない……わけではないのだけれど、それなりに人もまばらにいる。 そんな堤防の上を、ただただひたすらに川に沿って歩いているだけだ。 目的もなく、ふらふらと。 これが俺の眠たくないときに眠る方法であり、"とりあえず散歩する"というもの。 それなりに歩いていれば眠くなるし、頭をからっぽにしていれば思考は停止する。 以上の考えから、俺はいつもやり方を通してきたのだけど。 「……余計に目が冴えてきた」 今回に限っては逆効果だったらしい。 体を動かしたことで体は温まり、頭はより冴えてきて思考回路が活発になってしまった。 なんということでしょう。 面倒なことになった、と一人考え事をしていたからだろう。 だから、後ろに誰か近付いているということに気がつかなかった。 いや、違う。 誰かじゃなくて、そいつは一人しかいない。 出会い頭に体当たりよろしく突撃してくる相手なんて、俺は一人しか知らないから。 「――――――――おはよう!」 黒い帽子に赤いネクタイ、スカート。 俺の隣に住む、同じ大学に通う同級生。 怪しげなサークルにもう一人とつるんでいて、怪しさ全開で。 黒髪短髪で、美人で、スタイルのいい。 宇佐見蓮子。 「――――――――おはよう、じゃねぇだろ」 いきなり体当たりをぶちかましてきた蓮子を、つんのめりそうになりながらもなんとか受け止めて首だけ振り返って告げる。 しかし、目の前の少女は得意げにニコニコとしていた。 自分の行いに対して何も考えていないらしい。 いつものことなんだけど。 自分のやりたいことだけをやるという、出会った当初から変わらない奴だ。 「いいじゃない、人前じゃやらないんだし」 「アホか、そういう問題じゃないだろ」 俺の体に回された腕をゆっくりと解いていき、蓮子の前に向き直る。 男と女だからだろう、頭の位置はかなり異なっている。 およそ頭一つ分。 蓮子とはそれくらい背丈が違う。 俺が見下ろし、蓮子が見上げる。 それが、俺たちのお互いがお互いを見る景色だった。 「大体な、お前いい歳してみっともないと思わないのか?」 「女性に年齢の話は厳禁って言ってなかった?」 「訂正、お前だけ特別」 「いらないわよ、そんな特別!」 先ほどの発言で機嫌を損ねたらしく、打って変わって不機嫌そうにこちらを見る蓮子。 コロコロとその顔を変える蓮子は、まるで百面相のようだった。 俺は、その百面相が気にいっている。 「あんたはねぇ、女性に対するデリカシーが足りてないのよ!」 「大丈夫だ、メリーには普通に接している」 ブロンドの髪を持つ、どうみても外国人にしか見えない彼女ことメリー。 のんびりした奴だけど、少なくとも蓮子よりは女性らしい。 その仕草はとても上品に見えるし、蓮子みたいにがさつではない。 そう考えれば、メリーへの対応が蓮子より女性として扱うのはごく当然のことだった。 「メリーだけ特別扱い!?」 「いや、蓮子だけ」 後にも先にもそんな対応をするのは目の前の彼女だけだろう。 多分そうだろう、ある意味特別ではある。 今更普通にしろと言われても困る。 「……ふん、そうやって私だけ………やな奴!」 「帰る!さよならっ!」 そうやって踵を返す彼女、怒り心頭という表現が一番しっくりくるだろう。 そんな態度で、来た道をずんずんと帰っていく。 いつものように二人で言い争い、結局蓮子が怒るというパターンだ。 もう何度も繰り返されたお約束。 「おーい、風が強いから帽子飛ばされるなよー」 「うるさい!馬鹿!」 最近洗濯物が飛ばされるくらいに風が強く、昨日は俺のベランダに蓮子の服が入りこんでいた。 あらぬ冤罪をかけられたが、実に迷惑なことだった。 そのことを向こうも思い出したのか、顔を真っ赤にして叫んだ。 「あ………」 そして、一度目ならず二度目。 またしても、風が蓮子の持ち物を攫っていった。 「……………言ったらこれかよ!」 思わず駆けだしていた。 風に攫われたそれは、大空を舞うかの如く高く高く昇っていく。 それをたたただ、追いかけていく。 空を飛べるわけでもない俺は、二つの足で加速して追跡する。 飛びつづける鳥でもなく、飛行機でもないそれは。 重力に引かれて徐々に落下し、俺の元へと近づいてくる。 「届け!」 充分に加速し、目標へと自らを近づけるために飛び上がる。 伸ばした右手が、それを確かに掴んだ。 目的は達成した。 「よし!」 だが、いつまで経っても地に足がつく感触はなかった。 ふと足元を見た瞬間に気がつく。 広大な水面が広がっていて。 そして、そこに落ちるしかないことに。 「――――――!」 蓮子が俺を呼ぶ声が聞こえる。 けれどそれも、沈んだことで何も分からなかった。 幸いにして、別にケガもなく戻ることはできた。 特にここの川が大して流れが強いわけではないことは知っていたし、看板にも書かれていることだ。 すっかりずぶ濡れになってしまった重い衣服をうっとおしいと思いつつも、蓮子の元へと戻る。 「だ、大丈夫!?」 「川に落ちただけだろ、別に心配するほどのことでもない」 いつものあの強気な態度はどこへ行ったのか、今はただ俺を案じるかのように振る舞う蓮子。 実に珍しい、普段がこれならモテるであろうに。 ……無理か、お淑やかさとは無縁なのだから。 逆にそれだと調子が狂う、いつもの蓮子じゃないとつまらない。 「それより、ほらよ」 蓮子のトレードマークとも言える、黒い帽子。 それを蓮子の頭に被せた。 「………あ」 帽子は、幸いにして濡れることはなかった。 沈む直前に帽子を手放してしまったのだが、浮上した直後に落下する帽子をキャッチ。 あとは濡らさないように戻ってきたのだ。 「全く、手間かけさせるなよ」 グリグリと、蓮子の頭を帽子ごと撫でまわす。 それはいつから始めたのかは覚えていないけど、いつも彼女にしてきた行為。 「…………うん」 普段通りならば手を振り払うであろうのに、今回は大人しくそれを受け入れた。 目まで覆うほどに帽子を被っているから表情は分からないけど、きっといつもとは考えられないような表情をしているはずだ。 恥ずかしそうにしているのも、その証だろうから。 「へっくしゅ!」 だがそれも俺のくしゃみで変わる。 暖かくなってきたとはいえ、まだまだ肌寒い時期に川に飛び込んだのは不味かったのだろう。 「………あー、俺帰る。風邪引きたくないし」 何よりこんな気持ち悪いまま居たくはない。 ごく当たり前の判断だった。 じゃあな、と蓮子に別れを告げて踵を返そうとしたのだけど。 「……………」 袖を引っ張られていた。 俯いたまま、何も言わずに。 「何か用でもあるのか?」 「………ううん」 「そうか」 だが、蓮子は袖を離そうとはしなかった。 「なあ、俺帰るんだけど」 「知ってる」 「分かってるならいい、袖を離してくれ」 そう言われてか、数瞬迷った挙句にゆっくりと離していった。 名残惜しむかのように、何かをあきらめたかのように。 さて、と踏み出そうとしたそのとき。 「……………」 「……………」 俺の手を、蓮子が握っていた。 右手を自らの左手に合わせて。 まるで、手を繋いでいるかのように。 いつも活発な蓮子だけど、その手の小ささを感じてやっぱり女性であることを認識させられた。 「手、冷たいね」 「そりゃ冷たい川だったからな」 夏には快適であろうが、今の季節には馬鹿以外には飛び込もうという奴はいないだろう温度だ。 正直、寒い。 「ごめんね、私のために」 「……凄まじい手のひら返しだな、やな奴じゃなかったのか?」 「ううん」 「訂正、やな奴じゃなくて優しい奴」 体は冷たいはずだったのに、なんだかどこか一部だけ温かく、いや熱くなってきたのは気のせいだろうか。 ぎゅ、とより彼女の握りしめる手が強くなる。 それが、蓮子なりの"ありがとう"を言っている気がして。 なんとなく、気恥ずかしくなった。 もう蓮子の方を向くことは出来ないけど、多分俺と同じだろうから。 きっと目の前の昇る朝日にも似た、そんな色をしているはずだ。 「………帰るか」 「………うん」 帰ろう、蓮子と。 ─────────────── 「風邪ですね」 やはり、この肌寒い時期に寒中水泳はよろしくなかったらしい。 当然か、早朝や夜更けには防寒着が欲しいと思うくらいだ。 日中は気温が上がってきているとはいえ、未だ風は冷たい。 濡れたままで風を体いっぱいに受ければ、あとはいわずもがな。 立派な風邪引き野郎の誕生である。 「ではこの薬と……」 かかりつけの先生のありがたいお話を右の耳から左の耳へと受け流しつつ、この部屋の向こう側で待っている相方を思い浮かべる。 黙っていれば美人なのに、いかんせんその性格でいろいろと台無しな少女のことを。 呼ばれる前は大人しく雑誌を読んでいたが、飽きたらどこか行っていないか心配になる。 前科が多いだけに、ある意味信用できてしまうのが怖いところだ。 「ではもう一度ロビーで待っててください、お呼びしたら薬をお渡ししますので」 「はい、………ありがとうございました」 頭を下げるが、それだけで随分と頭に重さを感じた。 どうやら先ほどよりも重症らしい、困ったものだ。 そんな頭をもう一度上げて、かろうじて伸ばした右手でドアのノブを回した。 扉を開けて、廊下を抜けていく。 だたっ広い殺風景な部屋。 長い椅子が散らばるそこで、ぼんやりと見たその先には。 「あ、終わった?」 俺がずぶ濡れになった原因とも言える、宇佐見蓮子がいた。 よかった、今回は大人しくしてくれたと一安心する。 「ああ………あとはロビーに待って呼ばれるまで待つだけだ」 「やっぱり風邪?」 そうだ、と一言返して隣に座る。 ふと横目で蓮子を見た。 じっと何かを見るわけでもなく、大人しく座っているその姿は大人の女性にも見えた。 やっぱり、その他大勢の女性たちとは違って見えたのは気のせいだろうか。 いや、黙ってさえいればいいのだ。それだけに実に惜しい。 しかしながら、黙っている蓮子なんて気持ちが悪い。 そんな蓮子は見たくない、もしそうならば明日は世界が終わる時だ。 「―――――――――――様、三番までお越しください」 「ほら、呼ばれたわよ」 少しだけぼうっとしていたのだが、どうやら俺が呼ばれたらしい。 いつもならすぐ反応していたはずだろうけど、やはり風邪のせいで正常な反応が難しくなっているのだろう。 ずぶ濡れのときのようにいつもより重くなった体を引きずり、カウンターまで向かう。 「じゃあ外で待ってるから、早く来てね」 わかった、と返事を出す前に玄関へと駆けだしてしまった。 病院で走るなよと言いたいところだけど、焼けつくように痛い喉ではそれも叶わない。 みるみるうちに、蓮子はガラス張りの向こう側へと消えていってしまった。 いつもなら怒るところだけど、今日はやめておこう。 ここまで送り届けてくれたのは、他でもない蓮子なのだから。 「寝る前に一錠、あとはうがい薬を出しておきますね」 わかりましたといいつつ、心ここにあらずと言わんばかりに生返事をする。 授業中ではいつもこんな感じだ、おかげで話など頭に入りさえしない。 「お大事に」 「……ゴホッ……ありがとうございました」 言葉を出そうとすると、やはり咳が出る。 それでも何とかお礼だけは告げて、カウンターを後にした。 「そういえば、連れの子は彼女さんかしら?」 玄関に行こうという足が止まる。 ピタリ、と俺が完全に停止した。 「………いや、違いますけど」 「あら、そう」 「でも可愛い子よ、他の男に取られないようにね」 いらぬ心配をされてしまった。 分からなくもない、見た目だけなら本当にいいのだから。 だけど、それはとんでもない勘違いだ。 他の男に取られるなら、もうとっくに取られている。 再び歩き出した玄関の向こう側、切り分けられたかのように区分けられて整理された道路の上には。 赤い軽自動車が一つだけあった。 「遅かったわね」 助手席に乗り込んだ第一声は、そんな一言だった。 「蓮子が彼女かと聞かれた」 「………へぇ」 なんでもないように返すけど、その顔は少しだけいつもと違って見える。 平静を装いたいのだろうけど、正直丸分かり。 嘘をつくのが苦手なのだ。 ここでからかいたいところだが、車から追い出されるので何も言わないでおく。 これ以上聞くと墓穴を掘ると考えたのだろうか、それ以上は何も聞いてこなかった。 「しっかしびっくりしたわ、珍しく電話がかかったと思ったら風邪とはねぇ」 「仕方ないだろ、頼れるのは蓮子くらいしかいなかったんだ」 親元を離れて一人暮らしな俺は、頼れる人物が少ない。 友達もさほどいないし、知り合いと言える人だってごく少数だ。 そんな中、気兼ねなく呼べる相手と言えば一人しかいない。 「………あ、そう」 素っ気ない返事、でも何となく照れているのは今までの経験から分かる。 素直じゃないのだ、全く。 思い返せば、朝の一連の出来事は実に迅速な対応だった。 目覚めれば頭は痛い、体は重い、喉は腫れて声が出ない。 そんな三連コンボを朝一番で受けて、まともに立ちあがることさえ叶わない。 幸いにして枕元に充電中の携帯電話を手に取り、電話帳の中から一人を選びだした。 "宇佐見蓮子" 繋がってくれという思いは、確かに届いた。 壁一枚向こう側にいる、一人の少女に。 『何?また授業サボるのかしら?』 いつものように呆れたような口調が、耳にあてたスピーカーから聞こえた。 人によってはその場で電話を切らざるを得ないようなことだけど、俺たちにとってはごくごく普通のこと。 蓮子に電話する用事など、大体"サボるからなんとかしてくれ"というものが大半だ。 ただ残念ながら、今日の俺は普通じゃないのだけど。 『違う、今日は風邪だから大学には行けな………』 話の途中だったにもかかわらず、ツーツーツーと電話は途切れてしまった。 あいつめ、最後まで人の話は聞けよ。 もう一度電話帳から宇佐見蓮子を選び直した。 しかし、その前にピンポーンとインターホンが鳴った。 「……誰だよ、こんな朝から非常識な……」 朝から、しかもこっちは病気だっていうのになんて奴だ。 おのれ許さん、じわじわといたぶってくれる。 意を決し、分厚い扉を開いた先には。 「やっほ、大丈夫…………そうには見えないわね」 数十秒前まで通話していた相手が、目の前に居た。 何故ここに居る。 「蓮子……何をしにきたんだ………」 こんな状態で悪戯でもしにきたのだとしたら、随分性質の悪い話だ。 それならば、次からは"うさみみ"と呼び続けてやろうか。 そんな悪いことを考えていたのだけど、その予想は大分違っていたみたいだ。 「何って、お見舞い」 …………朝一番から、渾身のギャグを聞いた。 お腹いっぱいだ。 あの宇佐見蓮子が、お見舞いだと? そう考える前に体が動いたのは、今までの経験からくる条件反射だった。 「お帰りください」 ガチャリ、と扉を閉めてロック。 おまけにチェーンまで掛けた。 「ちょっと!どういうことよ!」 どうもこうもあるか。 いつも俺に対して変なことしかしてこない癖に、今更になってお見舞いだとは。 何か裏がある気がしてならない。 ドンドンドンとドアが叩かれるが、次第に音も聞こえなくなった。 「さーて、次は………」 電話する人物を間違えた、失敗だったと次の人物へ電話をかけようとする。 しかし、なぜかカーテンで遮られた窓の向こうからコンコンコンと音が鳴った。 そしてその音はどんどん大きくなっていく。 まさか、とは思うが。 カーテンを開いた向こう側には。 「開けなさい!!」 何故か、俺のベランダに蓮子が来ていた。 ……ベランダの向こう側から、こちら側へと渡ってきたのか? 隣同士だとはいえなんて奴だ。 「さもなくばガラスを突き破って侵入するわよ!」 しかしこのままだとガラスを割られかねないので、大人しく窓を開いた。 「全く、門前払いとはいい度胸ね!」 「………いやいや、お前も大概だろ」 正面から行けないのなら後ろからなどと誰が考える。 別に攻めに来たわけでもないのに。 そんなことをぼんやりと考えていたら、いつの間にか俺の近くまで来ていた。 じっ、と顔と顔を合わせられて。 ………いつになく真剣な表情で。 真っ黒な瞳が、確かに俺を捉えているのが見えた。 「……結構重症みたいね」 「朝起きたら……ゴホッ…………こんなことになってた」 正直体を起こすことでさえ億劫だ。 動くなら尚更。 誰かの支えが必要なほどではないが、それでも充分すぎるほどに体は悲鳴を上げている。 真っすぐ立つことでさえ、今ではあのシューティングゲームをノーミスクリアするくらいに難しかった。 「それよりも……なぜベランダから…………」 それよりも"ベランダを伝ってまで、どうしてここまで来た?"と質問しようとしたのだけど。 しかしながら、その疑問は封じられてしまった。 「……結構熱があるわね」 蓮子の手が、俺の額を確かに捉えていた。 小さい手だけど、ひんやりしていて気持ちが良かった。 いつもよりも霞む目に映った蓮子の顔は、いつもより険しい顔をしていた。 "俺を心配している" それが何も言わなくても分かった気がした。 「やっぱり、そうか」 けれど、少しだけふらついたと思ったら視界がぐらりと歪んでいく。 足元もおぼつかないのか、未だフラフラしたままだ。 「……ねぇ、保険証とお金は持ってる?」 「……ん?…………持ってるよ」 唐突に話されて、少しだけ言葉を理解するのに時間がかかった。 いや、このときは言葉を理解しているだけで、その裏にある意味を理解できなかったのは風邪のせいだと言いたい。 「よし、じゃあ今から病院まで送るわ。早くしなさい!」 そうして、俺はずるずると車まで連れていかれた。 抵抗する間もなく、病院へと連行されたのである。 ふと横目で蓮子を見る。 いつもは馬鹿やって、お互いにつまらないことで争ったりする仲だ。 でも、本当に困っているときは助けてくれる奴なんだと。 ……お見舞いに来てくれたのに追い返してしまったけど、それは普段の行いが悪いからで。 ついついいつもように、杜撰な対応をしてしまうのも判断に困ったからだ。 だからこそ、本当に困る奴だ。 いつも俺の目の前に現れ、場をかき回したあげく風のように去っていく。 そんな蓮子が、こうして俺の心配をしてくれるなんて。 想像もしたことがなかった。 「蓮子」 「何?」 運転に集中しているからか、顔をこちらに向けることはない。 けどその口調は決して棘のあるものじゃない。 普段とは違う、温かみを感じた。 「ありがとう」 蓮子の前だと、素直になれないけど。 でも、これだけはちゃんと言っておきたかったから。 「……やっぱり熱があるのね、アパートに着いたら起こしてあげるから寝てなさい」 そう言う前に、どんどん瞼が下りてくる。 限界だ。 少しずつ蓮子の声がフェードアウトしていく。 けれど、その前に。 「お礼を言うのはこっちよ」 「帽子のためだけに、川にまで飛び込んで……」 「…………ありがとう」 そんな言葉が、聞こえた気がした。 ─────────────── 今日は、生憎の雨だった。 いよいよ日差しも強くなり、連休を目前にしてのこの天気。 このところ常に晴れが続いていたこともあってか、いきなりの雨に戸惑う人たちが見受けられた。 天気予報でもしばらく晴れの見込みだと言っていたはずなのに、こうも見事なくらい外すとは流石である。 ただ雨が降り始めたのは授業中のことであり、俺は濡れることはなかった。 そんないつもと違った景色を、窓から眺めている。 気温がいつもよりも低いことから、温かいスープが心地よかった。 「随分と降るものだな……」 バケツをひっくり返したような、そんな雨が降り続いている。 先ほど携帯電話で交通状況を確認したのだが、かなり酷い有様らしい。 少なくとも、すぐに帰れそうな状況ではないということが一目で分かった。 どちらにせよ、傘の無いこの状況では帰ることなど出来はしないだろうけど。 ニ限目が終了後、早々に放送で休講のお知らせが響き渡ったその時は内心嬉しくもあった。 けれども交通状況が芳しくないこの状況では、結局大学から離れられることが出来ない。 休みになったとはいえ、帰宅は不可能という実に面白くない状況が完成した。 だから、雨が落ち着くまでどうやって暇をつぶすか。 それを考えるために俺は一人、学内の食堂にいる。 「あら、今日は珍しく一人?」 いかにして帰宅するかという算段を脳内で組み立てていたところ、誰かの声が聞こえた。 振り向いたその先には、数少ない俺の知り合いがお盆に料理を乗せていた。 実に自然な動きで、俺の向かい側の席へと座る。 その動作はまるで、容姿の華麗さに合わせて実に上品に見えた。 「いつも蓮子と一緒、みたいな発言はやめてくれ」 「誰も蓮子なんて言ってないわよ?」 「…………」 ………しまった、墓穴を掘ってしまった。 それを見てか、目の前の彼女はニヤニヤと得意げにこちらを見ていた。 これが野郎ならば反撃の一つでもするんだろうけど、残念ながら女の子だ。 時に例外は一つだけ存在するけれども、大人しく受け入れることにした。 「蓮子のことでも考えてた?」 「違うって、メリー」 露骨に目線をそらして、これ以上は答えないと態度で示す。 見えないけど、多分その顔は先ほど以上にニヤついていることだろう。 そのことについて何も思わないわけじゃない、でも肯定しても否定しても結局は面倒なことになりそうだった。 だからあえて、何も答えない方法を取ることにした。 「あら、拗ねちゃった?」 「そうじゃないって………」 そう言っても結局はメリーのペースに嵌ってしまうのだ。 あの独特の雰囲気に何故かいつも気圧されてしまう。 どうしてだろう、実に不思議なことである。 のんびりとした雰囲気が、蓮子と違っていてペースを崩されるのかもしれない。 「でも残念ね、今日の蓮子は昼からの授業よ」 「知ってる」 この曜日は蓮子が昼前に来て、俺と一緒に食事を取るからだ。 蓮子曰く"一人寂しく食事するんじゃなくて、誰かと楽しく食事したい"とのこと。 何故か弁当を持ってきているところを見たこともあれば、俺の分まで貰ったことがあった。 確かそのときは"作りすぎたから処分して"と、そう言われた覚えがある。 意外な形で女の子の手料理を食べる機会となったが、味は悪くなかった。 「……ああ、そういえばこんな話を聞いたことがあったわね」 と、唐突に話が切り替わる。 なんだかとても悪い予感がした。 「口についたご飯粒を取ろうとしていたら、写真部に撮られたって話」 「ぶっ!!」 思わず口に含んでいたスープを噴き出しそうになる。 俯いていたからか、器の外に漏れることもなかったのは実に幸いなことだった。 「ア、アレはだな。本当についていたのに中々取れなかった蓮子が悪いんであって………」 「うん、大丈夫。全部知っているから」 必死な言い訳も、その一言ですべて打ち砕かれてしまった。 実に悔しいが、全部本当のことだ。 「けどよく撮れてたわね、流石いい腕してたわ」 「俺にとってみれば、それが一番恨めしいことだけどな」 ある晴れた日、珍しく蓮子が弁当で来たときのこと。 その日に始めて蓮子の料理を口にしたから、よく覚えている。 蓮子に弁当を受け取り、弁当箱も寂しくなってきたときだった。 「蓮子、ご飯粒ついてる」 俺の指摘する通り、左の頬にご飯粒がついていた。 大学生にもなってとは思うが、タダ飯にありついている以上は突っ込むのは野暮だった。 馬鹿にしたら次は貰えないかもしれない、そんな考えがあったからだ。 「え?どっち?」 「左」 そう言って右の頬を手で触るという、ド定番なボケをかます。 テンプレじみたお約束を外さない辺りが、やはり宇佐見蓮子だった。 「動くな、俺が取ってやるから」 そう言ってじっとして動かなくなる蓮子。 "自分でやるからいい"と言うのかと思いきや、大人しく受け入れたまではよかった。 よかったのだけど。 手を伸ばした瞬間、なぜかシャッターの切る音が聞こえた。 風が吹く音に混じって聞こえたそれは、ただの幻聴だとその時は思っていた。 後日、部のネット掲示板に張られたのは。 まるで、"今からキスをしようとしている"ように見えた俺と蓮子の写真だった。 そこに映る俺は、真剣な表情で蓮子の頬に向かって手を伸ばしていた。 ……本当のことを言えば、その日はコンタクトレンズを忘れたので目を細めて見るしかなかったのだ。 伸ばされた手の先にいた蓮子が、何故かそれをぼーっと赤い顔をして見つめている。 ……それも後で気がついたのだけど、蓮子は少し体調が悪くなると顔が赤くなりやすい。 ぼーっとしているのも、朝早く起きたことの反動である。 そうやって言い訳したはいいものの、周りからは全く信じてもらえなかった。 またたく間にそれは広まり、知らない人にまで声をかけられるまでに発展した。 その後、隠し撮りで撮影の許可を貰っていないことがバレて、写真部はお亡くなりになった。 しかしその掲示板から削除されるまでの間、俺たちは"そういう関係"だと思わされるような写真を晒され続けたのだった。 そのおかげか、今でも大学内では蓮子といると違った視線を感じることもある。 酷い話だ。 「メリーさん、俺たちは決してそういう関係ではなくて…………」 「大丈夫よ、信じてるから」 「………………」 どっちをだ。 ここで変な勘違いをされては困る。 俺と蓮子は決して"そういう関係"じゃないんだ。 毎日蓮子が俺に突っかかって、それで俺がからかって。 すごくつまらないことで争う、そんな仲なんだ。 「みんなが考えているような関係じゃない、けど」 「けど?」 そんな関係だからこそ、そんな奴だからこそ。 「いなくなったらいなくなったで寂しいんだろうな」 きっとそうだ。 いつも隣にいた奴が、急にいなくなったりしたら。 どこかぽっかりと穴が開いたみたいに、何か物足りなさを感じてしまうのだろう。 それはどう頑張ったところで、絶対に替えの利かないものだから。 「………へぇ」 俺の答えを聞いて納得したのか、それ以上メリーは聞いてこなかった。 ………最後の一口を味わい、目の前の皿はすべて空となる。 「今はそれが聞けて嬉しいわ」 「お気に召したか?」 「ええ」 これ以上ないってくらいの笑顔で。 「蓮子がそれだけあなたに思われている、充分じゃないかしら?」 ………あれー? なんだか違う気がする。 醤油をソースと間違えたような、砂糖と塩を間違えたような。 よく似ているけれど、決定的な何かが違っている。 致命的なズレを感じた。 「だからさ、俺と蓮子は………」 「はいはい、分かってます」 子供が母親にあやされるように、軽くいなされてしまう。 これ以上何を言ったところで無駄な気がしてきてしまった。 妙に気がそがれてしまうのは、やっぱりメリーの持つ独特の雰囲気だからだろうか。 …………もういいや。 「やれやれ………」 すっかり軽くなったお盆と荷物を持ち上げて、返却棚へと向かう。 「もう行っちゃうの?」 「ここにいても仕方ない、濡れ鼠になって帰るよ」 先ほどから止むことのない雨を見て、そう決断した。 実際のところは、旗色の悪い状況であまり長居するのもよくないと感じたからでもあるけど。 さあ帰ろう、そう踏み出そうとした一歩目は。 またしても、袖をつかまれることで阻止された。 「ねぇ、私の家に来ない?」 予想だにしていない一言が耳に響き渡る。 差し出された一本の傘を、俺は受け取った。 メリーの家は、案外大学から近かったらしい。 他人の家など蓮子以外に知らないから、こうして他人の家に上がり込むのは二人目となる。 それのどれもが女性の家という、ある意味羨ましい状況ではあるが。 だが実際のところはやましい気持ちなどとは一切なく。 「はい、どうぞ」 「……ありがとう」 単純に雨宿り目的で、こうして居座っているだけだ。 そして、それは一人だけじゃなかった。 「メリー、そんな奴には粗茶で充分よ」 「出会い頭がそれか、随分酷い扱いだな」 「あんたもそうでしょうが!」 何故か、蓮子まで一緒にいた。 蓮子曰く。 "電車が途中で止まったので、近くまで来ていたメリーの家で雨宿りすることにした" とのこと。 まあ確かに、蓮子の来る時間帯あたりに急激に降り始めてきたころではあった。 見事にそれに鉢合わせた形で、行くも帰るも出来ない状況が出来上がったわけだ。 いつもの車は昨日に車検に出したということから、なんとも運の悪いことである。 ただ、そこにメリーの家が近いことを知っていたから、そこまで辿り着いたらしい。 しかしながら、他人の合鍵を持っているわけがなかったために扉の前でぷるぷる震えていたが。 その震える様は、まるで子犬のようで。 つい、俺は。 「お手」 瞬間、"お手"が俺の顎に突き刺さった。 自分以外の力で飛び上がるという、貴重な体験を味わったわけである。 未だ痛みを感じる顎をさすりながらも、差し出されたお茶を味わう。 良い香りとともに、適度な温度が体を温めていく。 「それで、どうしてここにいるのよ?」 「雨宿り」 「……メリー、こんな奴敷居を跨がせちゃ駄目よ。早く追い出すことをおすすめするわ」 「おい」 犬扱いしたことを未だに恨んでいるのか、機嫌の悪い蓮子だった。 だが蓮子よ。 「招かれざる客は、そっちのほうじゃないか?」 純然たる事実を蓮子に叩きつけた。 すると、うわーんとわざとらしくメリーに抱きつく。 「メリー、あいつがいじめてくるよー!」 わざわざ泣き真似までして、指を向けて叫ぶ。 実に器用なことだ。 「こら、人に指をさすんじゃありません」 「はいはい、仲がいいことは分かったから」 先ほど俺がいなされたように、蓮子もメリーの手によって収められる。 保母さんとか向いてるんじゃないだろうか、そんな気がした。 「なっ……誰があんな奴と……」 「でも帽子を取ってきてくれて嬉しかったり、風邪を引いちゃったから病院まで送り届けてあげたのよね?」 「それはっ!!………向こうが勝手にやったことで――――――――――――」 一方がぎゃあぎゃあと叫び、もう一方が冷静に対応する。 勝敗は目に見えているから見る必要はない。 横目で見た景色は、未だ雨が降り続いている。 帰るのは、しばらく先になりそうだった。 ─────────────── 今日ほどクーラーが恋しいと思った日は無いだろう。 今年の最高気温を記録したこの日、窓の向こう側に見える屋根は陽炎さえ見えるほどだった。 ここまで強い日差しもなかったし、ほぼ無風という条件が重なったこともなかった。 まるで嫌がらせのような天気が目の前に広がっている。 内陸かつ周囲を山を囲まれた盆地という地形の性質上、温かい空気が中々逃げていかないので猛暑になりやすいのだ。 そして、俺の今住んでいる地域も例外ではない。 「……………冷てぇ!!」 起床と同時にとんでもない量の汗をかいていた俺は、すかさず浴室へと駆けこんだ。 すかさずシャワーのカランを捻り、体いっぱいに冷水を浴びる。 急激に冷やされる体に寒さを覚えるよりは、むしろその寒さを求めていたから苦痛を感じ得ることはなかった。 充分に浴び終えてすっきりしているところに、一つのインターホンが鳴り響く。 …………いつぞやの"お見舞い"が頭をよぎる。 そんな訳ないだろうとは思うけれど、その"まさか"を呼び起こす相手が思い浮かぶのは実に不運なことだった。 ただの杞憂で終わってくれという願いは、結局聞き届けてもらえなかったらしい。 分厚い扉の向こう側には。 「………………」 「……………………………」 朝一番の俺と全く変わらないであろう、汗だくになった一人の少女がいた。 というか隣の住人、宇佐見蓮子だった。 「…………どうした?こんな朝一番から」 「…………クーラー、壊れた」 「………………」 今年は猛暑になるであろうことが予想されるのに、なんということであろうか。 この前の大雨といい、ツイていない。 日ごろの行いが悪いからだろうともとれるが、いつものことなのでどうでもよかったが。 「………入るか?」 「…………おじゃまします…………」 流石に泣きっ面に向かって刺しにかかる蜂ではないので、上がらせることにする。 思えばこれが、ターニングポイントとでも言うべきだったのだろうか。 どこでどう転ぶかなんて、神様でもない俺には分からないものだ。 消費電力なんて知らんと言わんばかりに、クーラーの設定温度はかなり低い数字を示している。 先ほどから通気口からは凄まじい勢いで風が流れてきている。 正直、寒い。 だがそれでも飽き足りないのか、リモコンを弄って設定温度を下げようとする蓮子。 「やめろ、これ以上寒くする気か」 リモコンを取り上げて、絶対に彼女に届かない位置へと移動させた。 すると不満げにこちらを見て反論した。 「まだまだ暑いのよ…………もっと下げて頂戴」 「残念ながら、これが最低温度だ」 リモコンに表示されている数字を見せて、これ以上下はないとアピール。 それを見て納得したのかは知らないが、ゴロンと寝転がる。 汗が張り付いていたのか、うっすらと蓮子の体のラインが浮かび上がっていた。 見てはいけないと、目線をそらした。 「………あー、もっと涼しくなる方法はないかしら?」 「シャワーでも浴びてこい」 「……そのフレーズだけ聞くと意味深ね」 じゃあ必要ないなと言ったところ、ごめんなさいが帰ってきたので大人しく使わせてやることにする。 くだらないこと考えてないでとっとと行けばいいのに、どうしてこうも突っかかるのだろうか? 今更考えたところで答えが出るのかは知らないけど、恐らくそれは宇佐見蓮子だからだとしか言えない。 こうでなくてはつまらないと思っている辺り、俺も大分重症なのだろう。 部屋の向こう側から、シャワーの音が聞こえる。 ………自分の家に女性がシャワーを浴び終わるのを待っている、なるほど。 先ほど言った蓮子の意味が分かった気がする。 ただ、分かったところで行動に移す気は全く無いが。 「あ……」 そして一つのことに気がつく。 着替え、どうするんだろう? そう考えていたときに一通の電話が入る。 ディスプレイに表示された名前は、数秒前に考えていた相手だった。 『どうした?』 『服どうしよう?』 『隣から取ってくればいいだろう?』 『嫌よ、あんな服を着たくはないし……かと言ってこのままじゃ外になんて絶対に出れないし』 『何よりあんなサウナみたいな部屋に戻りたくないわ』 壁一枚隔てた向こう側に行けばいいだけなんだろうけど、それが遥かに遠く見えるんだろう。 もし他人に見られるかもしれないというリスクを背負ってまで後者を選ぶ人は絶対にいない。 ならばさっさと前者を選んでいけばいいのに、この部屋の向こう側にいる人物は嫌だと言い張る。 実に面倒なことだ、どうすればいい? 『なら服でも貸そうか?』 『……そうするわ、現状において一番マシでしょうし』 俺の提案は賛成一致で可決された。 『じゃあ浴場の籠に適当に服を見繕ったものを置いておくからな』 『文句は?』 『駄目』 通話終了のボタンを押して、さっそく作業に取り掛かる。 クローゼットから何となく手に取った白いシャツと、ショートデニムを選ぶ。 ……蓮子とは服のサイズが違いすぎているけど、果たして大丈夫なのかは着てみないと分からない。 頭一つ分くらい蓮子とは体格が違う、でもデカければ多分着れないことはないだろう。 部屋を抜け廊下を渡って浴場の前まで辿り着き、扉の向こう側にまで聞こえるように叫んだ。 「蓮子、服置いておくぞー」 「分かったー」 くぐもった返答を聞き、持ってきた衣類を籠に突っ込む。 そして、そこで俺が見たものは予想だにしていないものだった。 「…………っ!」 蓮子の衣類、つまるところ。 下着が目の前に飛び込んできたのだ。 ……確かに籠を設置したのは俺だし、衣類をぶち込むにはちょうどいい。 だからといってこれは全くの想定外だった。 これ以上は目の毒だ、早々に立ち去るべきだろう。 何とも言えない気分で部屋まで戻ることにする。 いつも馬鹿な争いで忘れてしまいがちだけど、蓮子は女だ。 女性であることをこうもまざまざと見せつけられると困るというか。 俺だって男なのだ。 「…………くっそ…………何なんだよ」 先ほどの光景がフラッシュバックする。 忘れたくても瞼を閉じれば思い浮かんでしまうほどに。 これから蓮子を、どうやって見ればいい? 「お待たせ」 言われて振り返った先には、当然のごとく蓮子がいた。 いつもの帽子は無く、俺の見繕った服を纏っている。 予想通り服のサイズは合わなくて、子供が大人の服を着ているような状態になっていた。 ただそれが、妙な気分にさせたのは今にとって致命的だった。 これがいつも通りだったならば、こうも心動かされることもなかっただろうに。 「あ、ああ。服は大丈夫か?」 「ぶかぶかだけどね………着れないことは無いわ」 「やっぱり男なんだね、今更だけどさ」 そう言われて、やっぱり先ほどの光景が思い出される。 ……駄目だ。そんなことを考えちゃいけない。 「背丈が違いすぎてるだろ、当たり前だ」 「それもそうね、男と女だもん」 さっきよりもより明確なイメージで脳内に投射されてしまった。 やめろ、思い出すんじゃない。 そんな俺の思いなど知らずに、蓮子は俺の隣へと座る。 「ね、これから何する?」 「………蓮子が決めてくれ、なんでもいい」 「………珍しいわね?意見を言わないなんて」 普段通りならば、俺と蓮子が意見が衝突して争うんだけど。 けれど平静でいられない俺は、いつもと違うことを口にしていた。 本当に調子が狂う、蓮子はいつも通りだっていうのに。 どうしたんだろうか。 俺は、どうかしてしまったんだろうか。 「………本当に大丈夫?調子でも悪いの?」 「………何でもない、本当に何でもないって」 けれど決して蓮子とは顔を合わせない。 いや、合わせられない。 合わせたら最後、きっといつも通りじゃいられなくなる。 必死に蓮子の顔を合わせないように、首だけを動かして逃げ続ける。 「そんなわけにいかないわ、そう言って風邪引いたの覚えてるでしょ?」 「………………………」 過去の油断を持ちだされて、完全に返す言葉を失ってしまう。 これ以上言ったところで、まるで説得力が出てこない。 「そうやってさ、いつも自分で抱え込んでるよね?」 「自分一人でなんとかしようとしてさ、それが出来ちゃうから」 そうじゃない。 そんなことを言わせたいんじゃない。 「一緒にいて楽しいから、ついそうやってやりすぎちゃう………甘えちゃうんだ」 「負担を強いていることも分かってる」 「でもさ、そんな私でも出来ることだってあるよ。隣で見てきたからこそ分かるから」 逃げる俺の目の前に、蓮子は顔を合わせて。 「ねぇ、そんなに私は頼りない?」 「私って、邪魔?」 …………違う。 そんなわけ、ないだろ。 「………きっとそうだったら、もうとっくに嫌いになってる」 「――――――――え?」 目を見開き、驚いたかのように固まる蓮子。 それを無視して、更に俺は言葉を重ねていく。 「邪魔なんかじゃない、嫌いになんてなれるわけないだろ」 「ずっと隣にいるんだ、頼らないわけがない」 メリーにも告げた、俺の本心。 向こうも本心をぶつけてきたのだから、本心で返すのが礼儀というもの。 俺なりのけじめとでも言うべきか。 ――――――――――さあ、今こそ告げる時だ。 「それとさ」 「………うん」 「…………見えてる」 「……………………………は?」 この白いシャツ、実は首の口がかなり広いタイプだ。 それに明らかにサイズが違う服。 おまけに座って屈むという条件がそろえば。 "本来見えるはずの無いものが見える"のは、偶然の産物。 一言言わせてもらうと、俺は悪くねぇ。 「……………………」 蓮子が数秒固まる。 そして、それが再び動き出したその時。 「馬鹿ーーーーーーーーーー!!!!!!!」 俺の顎に突き刺さる黄金の右手。 そしてその声はアパート中に響き渡り、遥か先まで届いたであろう。 そんなBGMを耳にして、再び自分以外の力で宙を舞う。 俺が覚えているのは、そこまでだった。 目覚めたのは、すっかり日も落ちる頃だった。 気温も大分下がり始め、いつしかあれだけ待ち望んだクーラーはどうでもよくなってくる。 蓮子が寝かせたのだろう、タオルケットを掛けられていることに気がつく。 ふと見た窓の向こう側、ベランダに一人佇む蓮子がいた。 服を自分の家まで取りに行ったのだろう、いつもの服装に戻っていた。 窓を開けて、蓮子の隣に立ち並ぶ。 真っ赤になって沈んでいく夕日が、今日一日の終わりを表していた。 「あのさ」 唐突に話す蓮子。 こうして話が始まるのは、別に珍しいことじゃない。 「嫌いになんてなれない、なんて本当?」 見下げたその先に見えた蓮子は、いつものような活発さはなく。 何かに怯えているようで、それでいて期待しているように映った。 恋する少女が、答えを待ち望んでいるかのように。 ――――――――――――――恋する少女? まさかな。 「嘘じゃない、全部本当だ」 「………本当に本当?」 「本当に本当」 「本当に本当に本当?」 「本当に本当に本当だ」 しつこい。 もう何度も言わなくてもいいだろうに。 「今更嘘なんてついてどうするんだ?」 「思い出せよ、今までどれだけのことがあったと思ってる?」 その答えを聞いて納得したのか、それ以上は聞いてこなかった。 ふと横目で見た蓮子は夕日に照らされていて。 それが夕日の赤さとは違って見えたのは、多分気のせいだろう。 「………ありがと」 向こう側へと太陽が姿を隠すまで、俺たちは見送り続けた。 ─────────────── 蓮子の家のクーラーが壊れたということで、早々に業者に頼んだらしい。 だが、到着には一週間ほどかかると言われたとのこと。 当然か、この猛暑でクーラーの使用回数や時間はいつもと違いすぎている。 それだけ使いこまれれば壊れもするし、それに対応する人だって引っ張りだこだろう。 需要が増えればそれだけ混雑するということであるし、今までのようにはいかないのは当たり前だ。 では来るまでの間、サウナと化した部屋に居続けるのだろうか? 答えは否。 「もうすぐ出来るわよー!」 「おーう」 宇佐見蓮子は、俺のところに来るという選択肢をとった。 確かにお互いに知りつくした仲ではあるし、良いところも悪いところも全部ひっくるめて分かり合える関係ではある。 だがしかし、それならば何故メリーを選ばなかったのか? 付き合いの長さからすればメリーの方が長いはずだし、それに同性だ。 大学だって近い、他にもいろんなメリットがある。 それでもメリーの元へ行かない、そんな理由があるらしい。 「どうして、蓮子はメリーの元へ行かなかったんだ?」 一度だけ、二人にそんな質問をしたことがある。 蓮子曰く。 「………駄目、だったかな?」 「やっぱり、邪魔?」 なんて上目遣いでかつ涙目で答えられては、これ以上問い詰める気にもならない。 "邪魔じゃない"と啖呵を切った以上は、絶対に引き返せないから。 もし恨むのなら、自分を恨む以外になかった。 そして、メリーはというと。 「知ってるわよ」 やっと答えが聞ける、そう期待していたのだけども。 「でもね、それは私が言ったところで意味がないものよ」 「あなたが、自分の手で見つけ出さなきゃいけないものだから」 そう言って、後ははぐらかされてしまった。 分かったことといえば、"答えは確かに存在する"ということ。 たったそれだけだった。 まあ本気にせよ冗談にせよ、あんなサウナみたいな部屋に送り返すほど鬼畜人でもないので、蓮子の選択を受け入れたということだ。 「はい、召し上がれ」 「………いただきます」 受け入れたことによって生まれた俺のメリットと言えば。 例えば、飯が何もしなくても生まれること。 他にもいろいろあるんだけど、一人暮らしの身ではそれでさえもありがたい話ではある。 小さい頃はそんなことをしなくてもよかったのだけど、いざ自分がやってみると結構面倒くさい。 炊事、洗濯、掃除と全ての業務を一人でこなさなければならない以上、一つでも減ると精神的に楽なのだ。 「ね、今日はどうかな?」 ここで適当な返答をすると、その日の機嫌が悪くなることはもちろんのこと。 一日はろくに話を聞いてくれない。 あの時は実に気まずかった、ギスギスしたあの雰囲気はご勘弁願いたい。 …………まあ、昨日のことなんだけど。 「この前よりも味付けが薄くなったな、いいんじゃないか?」 今日の夕食は、回鍋肉だった。 以前は醤油か味噌か分からないけど分量を間違えたのか、随分濃い味付けだった。 おかげで完食するまでご飯を食べ続けるということをしたせいで、次の日は食欲が全くなかったくらいだ。 「へへ、ありがと」 得意げに笑う蓮子、思えばこの表情を見ることも随分多くなった。 いや、それ以外にも怒ったり、悲しんだり、楽しそうにしていたりとそんな百面相を目の前で見てきた。 以前にも増して、それが好ましくなったのは確かだった。 思えば、どんどん蓮子との距離が縮まってきている気がする。 だからといってそれが嫌なわけでもない。 ただそれが、周りから見た俺たちとでは随分違う距離になっているんだけど。 みんなが思っているほど、近いわけじゃないから。 『目に見えるものが、全部本当ってわけじゃないわ』 そんな言葉を、メリーから聞いた覚えがある。 それはきっと自分の"目"のことを揶揄した発言なんだろうけど、俺にはまるで。 "蓮子とあなたの間にある、見えていないものを見つけなさい" そんなことを伝えてきた気がして。 考えすぎなのかもしれないけど、でも。 どうしてもそれが頭から離れないのはどうしてなのだろうか。 「ごちそうさま」 考え事をしていたからか、いつの間にか蓮子が先に食事を終えてしまっていた。 ……冷めてしまわないうちに、早く食べよう。 真っ暗な一大スクリーンに広がるのは、小さな輝きたち。 何光年という長い時間を超えて、俺たちの目の前に姿を現す。 それはもうとっくに向こう側ではなくなっているのかもしれない。 けれど、確かにそこにあったのだと。 皆に知らせるために輝いているんだと、小さい頃は考えていた。 そしてそれは、今こうして見ている俺たちも。 あの果てしない向こう側の世界で見えているんだろう。 人間の一生なんて、惑星や銀河に比べたらはるかにちっぽけなものなんだけど。 それでも俺たちが生きた証を残せたなら、きっと意味はあるんだ。 そんなことを蓮子の隣に座って、ぼんやりと考えていた。 「そういえばさ、初めて会ったのもここだったよね?」 「そう、だったな」 横にいる蓮子を見ると、とても楽しそうに笑っていた。 ふと、つられて俺も笑みを浮かべていた。 大学へ入学して一ヵ月、慣れない土地へようやく慣れ始めた頃。 夜眠れなかったその日に、眠気を誘うために散歩に出かけた。 周りにどんなものがあるのか、まだ正確に把握していたわけではなかったし、いつもとは違った景色を見てみたかったのだ。 そんな中、俺は辿り着いたのは川が流れる堤防。 珍しくコンクリートで整備されていない、草に覆われた斜面のあるところだった。 足も疲れたのでさて一休みと思っていたら、突然奴は現れた。 思い返せば、それが全ての始まり。 「そこ!私の特等席!」 会って初対面、いきなりそんな言葉を投げかけられた。 暗闇の中で話しかけられてびっくりしたのだけど、その物言いにカチンと来たのも覚えている。 「知らん、疲れてんだよ」 「知らないわよ、早くどきなさい」 「いっつもそこで星を見てるのよ、邪魔」 そう言われると余計に退きたくなくなる。 ましてや他人、傍若無人な振る舞いに腹が立った。 いつもなら大人しく引くであろう場面なのに、なぜかそうするという選択肢は浮かんでこなかった。 女性だからとか、夜だからとか、疲れているからとか。 そんなことはどうでもよかった。 「やだね、やるなら力ずくでやってみろ」 「言ったわね、覚悟しなさい!」 会って数分でまさかの喧嘩勃発という始まり方。 もちろん第一印象なんてお互いに最悪、友好度なんてマイナスを振り切る勢いだった。 底なし沼もいいところで、遥か下を筒抜けて向こう側まで届いたんじゃないかってくらいに。 でも、そんな相手だからっていつまでも争ってるわけじゃない。 堤防の上、アスファルトで舗装された場所で対峙していて気がついた。 「………光?」 二つの光が、こちらに向かってきていた。 もうあまり耳にすることは無いけど、あの音を間違える人はいない。 排気ガスがマフラーを伝わって出されるあの音を。 思い浮かぶものなんて、一つしかない。 「まぶしっ……………」 同時に目の前の相手も気がついていたのだろう、でも暗闇で急に光を見せられたことで視力が急激に低下。 手で目を隠し、そこから動くことを止めてしまった。 …………………堤防の道のど真ん中で。 「おい!車が来るぞ!」 そんな声でさえ、向こうから鳴らされているクラクションでかき消されていく。 ………迷っている暇は無い。 考える前に体が動き出す。 「……………間に合え!」 散歩していたことからくる疲労と、先ほどから争ったことによる疲労。 プラスされた二つの疲労を無視して、全力で加速する。 もっと早く、もっと早く届けと両手を伸ばして。 あと三歩。 あと二歩。 あと一歩。 ―――――――――交差する直前、動かなくなった彼女を抱え込む。 加速を殺すことなく、ダイビングするような形で堤防の下へと転げ落ちていった。 間一髪。 クラクションが鳴り響く車を、振り返って見届けた。 「危ねぇ…………」 人通りの少ない、しかも夜道だからとスピードを上げていたのだろう。 しかしライトで照らし映された時にはもう遅い、止まるには間に合わないのだ。 本当に危なかった、一歩間違えれば俺も跳ね飛ばされていたかもしれない。 「…………え、何?何が起こったの?」 やっと暗闇に目が慣れたのか、それとも突き飛ばされたショックでようやく目を覚ましたのか。 変わり果てた状況に抱えていた少女は混乱していたようだった。 「あんた、車に轢かれそうになったんだよ」 「え?」 「暗闇で光を急に見たことで止まって、避けようとしなかったから俺が突き飛ばしたんだ」 堤防の草木を転がったことを確かに証明する、泥や草などが付着していることに気がついたようだ。 慌てて身の回りを確認して、異常がないか確認しているらしい。 それが一通り終わった後。 「あ、ありがとうございました」 素直に頭を下げてきた。 自分の命を助けてもらったのだ、当然の行動だった。 「いいよ、別にケガもないみたいだし」 「で、でも」 先ほどの勢いはどこへ行ったのやら、一気にしおらしくなった。 良く見れば、結構美人だった。 …………残念ながら、今は土埃にまみれているけど。 「………ふぁ」 先ほどの命のやりとりもなんのその。 緊張がほぐれたからか、眠気が回ってきた。 時計で見た時間は、寝るにはちょうどいい時間だった。 「じゃあな、もう車に轢かれんなよ」 「あ、あの!」 後ろから聞こえる声を無視して、俺は家へと帰った。 別にお礼が目的で助けたわけじゃない、助かったのならそれでいいのだ。 だけど。 ――――――――――次の日。 「「あ」」 隣に住んでいるなんて、誰が考える? 「意外だったぞ、隣に住んでいたなんて」 「お互い挨拶回りもしていなかったものね、当たり前だけど」 さあ大学へ向かうぞと扉を開いたその時、数時間前の相手が目の前にいたなんて。 灯台元暗し、なんて言葉が真っ先に思い浮かんだのを覚えている。 「それで大学が同じだって知って」 「あとはいつも通りの関係…………」 向かう先も全く同じだと知り、一緒に大学へと向かった。 それまではよかったんだけど。 「その間に、どんどん遠慮がなくなっていったと」 蓮子の地とでも言うべきなのか、あの遠慮のない性格が表に出てきた。 まあ一応始めから知っていたことだし、驚きもしなかったんだけど。 周りの人はあの性格を見せられて、次第にどんどん離れていくらしい。 実に残念なことだ。 「………嫌?」 「いいや、それでいいんじゃないか?」 「変に畏まられるよりはずっといいよ」 なんというか、嘘をつくのもつかれるのも苦手だったりする。 そう言う意味では、本音を全力でぶつけてくることは非常に好ましいことだった。 馬鹿なことで争って、結構酷いことをされても。 ……それでも、嫌いにならない理由なんだろう。 「………ありがと」 そのお礼を言うのは、きっと俺だ。 「やめてくれ、今更そんなことを言うなよ」 「………でもさ、ちゃんと言っておきたいの」 急に、蓮子が真剣な表情に変わる。 いつものあのふざけた雰囲気は、どこかへと消えていた。 一陣の風が俺たちを撫でていき、どんどん目が覚めていく。 「蓮子?」 「危ないところを助けてもらったり………いつもありがとね、これはそのお礼」 瞬間、蓮子の顔が近付いて。 これ以上ないってくらいに接近して。 蓮子だけしか見えなくなって。 それ以外には何も考えられなくなって。 「………………ん」 蓮子の"お礼"を、受け取った。 そこにある、確かな気持ちを。 言わなくても分かる、全力で本音をぶつけ合ってきたからこそ。 ―――――――"好き"――――――― 想いが、伝わっていく。 ─────────────── 徐々に視界が広がっていく。 それと同時に、感じていた確かな感触も消えていく。 見えた先、目の前にいるのは。 「…………」 自分の先ほどの行為を思い出したかのように、真っ赤になる蓮子がいた。 その顔が、その仕草が、その姿が。 それを見て、未だかつてないこの沸き起こる感情は一体? 蓮子は、何を俺に伝えた? ………………。 「れん、こ?」 上手く纏まらない頭で、必死に振り絞った言葉はそれだけだった。 頭の中は蓮子のことで一杯で、それ以外には何も考えられない。 目を、離すことができない。 「………難しく考えなくていいよ、これはお礼だから」 「………え?」 「………今までありがとね、じゃ!」 未だ顔を赤くしたまま、立ち上がって一目散に逃げるように消えていった。 それを俺はただ、見送ることしか出来なかった。 あの唇に残った確かな感触が未だに残っていて。 ぐるぐると回り続ける思考回路には、追いかけるという選択肢は残っていなかった。 そこから動けないままで。 「………ああ、そういえば」 「今日で、蓮子との生活も最後だったな」 蓮子が残した、最後の言葉の意味を理解するのが精一杯だった。 次の日から、一人で考えることが多くなった。 蓮子がいなくなったから当たり前なのだけど、以前よりも部屋が広く感じた。 何をやってもどこか上の空で、蓮子以外のことは思い浮かばない。 ボケっとしすぎて赤信号で渡りそうになったり、教授に叱られたりと散々なのに、気合がまるで入らない。 それでも、蓮子のことが頭に浮かぶ間は気分が良かった。 「………蓮子」 こうして独り言を言う回数も増えてきた。 病気でもないのに、どうしてか独り言が出てしまう。 くそ、と心の中で呟いていつもに戻る。 見下げた器の中にある麺は、いつの間にか汁を吸いつくしていた。 「………………」 以前よりもすっかり太くなってしまった麺を、口に運んだ。 それも結局、蓮子のことで頭が一杯になってしまって何も分からない。 重症だった。 「あら、また一人?」 そして、その頭に浮かんでいる相方が目の前に現れた。 いつものように、何も言わないで向かい側に座る。 「………そうだよ、メリー」 「………考え事?あなたにしては珍しいわね」 それは俺を馬鹿にしているのかと聞きたかったが、正直今はどうでもよかった。 今の俺の状態が良くなるのなら、いくらでも罵詈雑言を受けてもいいとさえ思えた。 ………特殊な性癖を持つ人間じゃないけど。 「さしずめ蓮子のことだったりして」 「ぶっ!」 またしても器の中身が零れなかったのは、実に幸いなことだった。 「………本当に分かりやすいわね」 「………嘘をつくのは苦手なんだよ」 この先きっと苦労するかもしれないけど、でもそれが性分だから仕方ない。 今更変えることなど出来ない、俺という体を成すものだから。 「………はぁ」 「その様子だと大分重症ね、何があったの?」 「……………」 今それを話していいものか、話さないでおくべきか。 俺の頭の中の天秤の量りは、片方に傾いた。 「実は、蓮子にキスされた」 「へぇ、よかったじゃない」 よくない。 そのせいで俺はこんなに考えてしまっているんだから。 「………その表情を見る限り、それが原因かしら?」 「…………」 やっぱり、俺には嘘はつけないらしい。 駆け引きなんて一生無理な気がしてきた。 もういい、全部話そう。 「今までの"お礼"として、キスを貰った」 「………ふうん」 何かを思い浮かべるように、そう返答するメリー。 きっとその裏にある何かを感じ取っているんだろうけど、俺には教える気はないだろう。 今までもずっとそうだったから。 その答えは、俺が見つけるべきなんだと暗にそう告げたのだから。 「でもそれは違う、嘘だ」 「キスをする理由がお礼だからとはなりえない」 「どうして?」 その疑問に対して、俺は絶対の自信を持って答える。 「今まで一緒にいて分かるんだ、本音をぶつけ合った仲だから」 あの堤防で出会ってから、ずっとそうやって馬鹿な争いを続けて。 何度も何度も繰り返してきたからこそ、分かることだから。 「………あのやりとりを繰り返しているんだもの、当然かしら?」 当たり前だ。 どれだけ一緒だったと思っている。 「………だからこそ、なぜあのとき嘘をついたのかが分からない」 それだけの関係だからこそ、何故"バレる嘘をつく"理由が分からない。 キスをした理由が、お礼だとはあまりに説得力がない。 かと言ってお礼としてキスをするほど軽い奴じゃない、それは絶対だ。 そうしてずっと考えていたその時、メリーから俺に考えもつかなかった言葉が返ってくる。 「………そうねぇ………じゃあ、本人に会ってみたらどうかしら?」 「それだけ悩んでも答えが出ないのなら、答えを知っている人に行くべきよ」 「………直接会いに行く、か」 「もう何度も繰り返したことなんでしょう?楽勝じゃない」 いつもなら、きっと息を吸うくらいに簡単なのだろう。 けれど今は、地獄の最下層から這い上がるくらいに難しい。 でも、行かなきゃ。 この胸の内から沸き起こる思いも、蓮子の嘘も。 全部、決着がつくはずだから。 「……ちなみに、当てはあるのかしら?」 その質問に対して、俺は―――――――――。 「そこ、俺の特等席」 「え?」 すっかり日も暮れて、いつしか月が昇り始めたころ。 俺はあの堤防に来ていた。 探し求めていた相手は、確かにそこにいた。 「いっつもそこで星を見てるんだよ」 「な、なんで?どうして………」 俺が来たことに驚いているのだろう、酷く狼狽する蓮子。 それもそのはずだ。 携帯電話の電源も切り、俺を避ける生活を送ってきていたのだ。 それがこうも簡単に捕まるとは、恐らく予想もしていなかっただろう。 「今日が何曜日か分かるか?」 「あ………」 そう、最初に会ったあの時と同じ曜日。 そして、蓮子にキスを貰ったあの曜日。 全て同じ。 宇佐見蓮子は、同じ曜日にここに来る。 「人間、中々染みついた習慣は抜け出せないもんな?」 「…………」 日常的に繰り返されるそれは、癖みたいなもの。 反復して行われるそれはいつしか自分の一つとなり、形を成す。 それを無くすことはすごく難しい。 年が経てば経つほどに。 どんなに徹底したところで絶対にボロが出る。 俺の知る宇佐見蓮子ならば。 ただそれを利用した、それだけのことだ。 ……………来るかどうかは、賭けだったけれど。 ごくごく自然に蓮子の隣へと座る。 「…………分かっちゃうんだ、結局」 「当たり前だろ、どれだけ隣にいたと思ってるんだ?」 もう何度繰り返したか分からない台詞を告げる。 それは薄っぺらいものじゃない、ここに至るまで積み重ねてきた確かな厚みがある。 隣にいた蓮子だからこそ分かっていることだ。 「………この前、"お礼"したよね?」 「………そうだな」 忘れもしない。 ………忘れられない。 あの時のことは、ずっと覚えている。 それこそ夢に出てくるくらいに。 「実はさ、お礼なんかじゃないんだ」 「…………知ってる」 「…………あはは、それも分かっちゃうのか」 乾いた笑い声で、そう告げた蓮子。 それは、どこか諦めにも似た声色だった。 意を決し、俺はついに本題へと迫る。 「なんで、嘘なんかついたんだ?」 「…………怖かったの」 振り向いたその先、怯えたような目をした蓮子が瞳の中に映った。 まるで、"うさみみ"を生やしたあの動物のように。 「勇気を出して行動してみたけど、結局怖くなったの」 「関係が壊れるのが怖くて、拒絶されるのが怖くて、私は嘘をついた」 「分かってた、嘘をついたところで意味がないことくらい」 まだまだ吐露は続く。 ずっと溜めこんでいたものを吐き出すかのように。 抱えていたものを解き放つ。 「でも伝えたかった、ずっと抱え込んだままは嫌だから」 「誰かになんて取られたくないから、それだけは絶対に嫌だから」 想いを伝えるというのは、とても勇気がいることだ。 形の無い、実体の無いものを行動や言葉で示すのは本当に難しいことだ。 その思いは伝わらないかもしれない、そんなリスクを背負ってまでするべきなのか? 形にしなければ、それはそこまで。 形になれば、一つ前へと進める。 自分の中の天秤にかけて、どちらか選択をしていく。 勝利の栄冠を手にするか、それとも敗北に咽び泣きゆくのか。 それは勇気ある者たちが手にした証であり、充分に誇るべきことだ。 例えその結果がどうなろうとも、掴んだのは自分自身なのだから。 「だから、私は」 「今度は"行動"じゃなくて"言葉"で伝えます」 「――――――――――――好きです、あなたのことが大好きです」 「答えを、聞かせてください」 目の前の少女は、一つ前へと進むことを選んだ。 それに対して俺は。 ―――――――――――――いつも通り、本音を打ち返すだけだ。 「………ずっと、ずっと考えていた」 「…………………」 「あの日から、俺はいつもの俺じゃなくなってた」 それは、戸惑い。 「いろんなつまらんミスはする、怒られる、散々な日々だった」 それは、苛立ち。 「不思議だった、どうしてそこまで蓮子のことを考えてしまうのか」 それは、悩み。 「でもやっと分かったんだ、やっと見つけ出せたんだ」 「この思いはなんだったのか、やっと答えを言えるんだ」 それは、答え。 ずっと奥底で眠っていた、たった一つのシンプルな答え。 気がつかなかった、名前をつけ忘れていた大事なもの。 「俺も、蓮子が好きだ」 想いは、ようやく一つになる。 確かな形を持って、目の前に姿を現す。 「…………うん!」 待ち望んでいたものは、すぐそこにある。 手を伸ばせば、手に入れることができる。 さあ。 掴め。 「………大好き!」 かけがえのないものは、この手の中に。 俺はずっと、ずっと。 それを大切にして、守り続けていくのだろう。 ―――――――――――蓮子と共に。 Megalith 2012/05/07,2012/05/10,2012/05/12,2012/05/14,2012/05/15,2012/05/16 ───────────────────────────────────────────── 「おめでとう」 「……ありがとう」 祝福の言葉に、感謝の言葉をもって返す。 それは投げかけられた言葉に対してじゃない。 今までの思いを込めた、目の前の彼女の行いに対してだ。 「それにしても、ここまで来るのに随分と時間がかかったわね」 そのことを言われたら、本当に苦笑するしかない。 あの堤防で出会ってからどれだけの日々が過ぎ、想いを伝えるまでの長さといったら。 始めから見ていたとしたら、凄くやきもきしたに違いないだろう。 「それも、メリーがヒントを与えてくれたからだろ?」 一番それに近いであろう、傍観者にそう告げる。 行動では分かっているのに、無意識では出来ているのに。 いざ気がつくと異常なくらいに鈍感な俺たちを見ていて、歯痒かったんじゃないだろうか。 「………だとしても、答えを見つけ出したのはあなただから」 「………けどさ、それでも俺は感謝してるんだよ」 だからこそ、最後まで見捨てないで助けてくれたことには本当に感謝している。 きっと、一生頭が上がらないことだろう。 ………今までもそうだったけど。 最後まで、力関係は変わらないままなんだろうな。 「いいのよ、私にとっての願いはもう叶ったから」 「…………流石だな、俺の手助けもいらなかったか」 「それは違うわ」 そう言うと、彼女は笑って。 「あんなに幸せな顔をする親友を見れたんだもの」 「感謝しているのは、何もあなただけってわけじゃないのよ?」 今まで見たことがない、最高の笑顔を見せてくれた。 きっと、それが彼女なりの"感謝"の気持ちなんだろう。 「………そういえば、蓮子との待ち合わせは大丈夫なの?」 「………あ、マズい」 「女の子を待たせちゃ駄目よ、早く行ってあげなさい」 時計を見て、慌てて立ちあがって店を出ようとするその瞬間。 小さい声で、誰にも聞こえないくらいの声で。 「―――――――――」 その言葉が、はっきりと聞こえた。 自分が見ている自分と、他人が見ている自分は違う。 主観で見ていたものが、客観からすれば別のものに見えることだってある。 見掛け上そう見えるだけであって、実は………なんてよくある話だ。 時に人はそれに騙され、気付かないで日々を過ごしている。 そしてそれに気がついた時には見る目が変わる。 周りを渦巻くものが、いきなり姿を変えたように映るはずだ。 まるで、世界が変わったかのように。 けれど、本当に変わったのは。 ―――――――――――自分自身だ。 「…………私のこと、好き?」 その問いに対して、返す言葉は――――――。 「………起きた?」 寝ぼけ眼で霞む瞳を擦った先、ピントが重なりあって見えたのは。 俺の恋人が本を片手に、目線だけをこちらに向けていた所だった。 左手に嵌めた時計の針は、あれから三十分ほど経過していることを示していた。 「………寝てた、のか」 「うん、そりゃもうぐっすりと」 出発と同時に眠ってしまったらしい、道理で記憶が全くないわけだ。 あの独特の揺れが眠気を誘い、いつの間にか夢の世界へと旅立ったということらしい。 欠伸をしながら、おもいっきり背伸びをする。 疲れが少しだけ取れた気がした。 「………ね、ついたら何しようか?」 「そうだな………蓮子の実家を見ておきたいな」 メリーに似た誰かが、知らない道を歩いていた。 気丈な彼女だけど、好きな人の前だと乙女になる。 そんな彼女の隣にいる男も、彼女のことが好きだった。 何故か、そんな夢を見ていた。 「………どうして?」 でも、それは俺じゃない誰かだ。 ただの夢、ありもしない幻想だ。 きっと誰かの世界に、少しだけ入り込んでしまったのだろう。 俺の世界はここにしかないから。 どれだけ俺の居場所を探したところで、そこ以外には見つからない。 「蓮子の両親に挨拶しておきたいんだよ」 宇佐見蓮子という、がさつで、乱暴で、遠慮のない。 優しくて、頭がよくて、美人で、俺以上に俺を理解している。 大好きな彼女の隣が、俺の居場所だから。 俺の世界は、現実はそこにしかない。 「蓮子と付き合ってます、って」 今までいた場所は変わらない、皆が見ていた場所も変わらない。 でも、"蓮子が好き"だと分かったその時。 俺の世界は変わった。 「………な、何を言ってるのよ」 けれど、本当に変わったのは俺自身なんだろう。 以前ならば、絶対にこんなことを言わなかったという言葉だって言える。 「………ふん、勝手にすればいいじゃない」 心にも思わない台詞を吐く蓮子を見て思う。 彼女と一緒にいてよかった、と。 「………全く、素直じゃないことで」 きっとこうして、いつまでも俺達の日常は続いていくのだろう。 何年、何十年と月日を重ねても。 最初とは違う、変わった景色の中の世界で。 今日も俺は生き続けるのだ。 「………うっさいわよ、ばーか」 この世界で愛しい人と共に。 ずっと、ずっと歩き続けていく。 ――――――――さあ、一歩踏み出そう。 「………………これからも、よろしくね」 以前よりも少しだけ素直になってくれた、蓮子の手を取って。 『お幸せに』 この世界のどこか、はるか向こう側から。 そんな言葉が、聞こえた気がした。 了 Megalith 2012/05/20 ───────────────────────────────────────────── 数時間前とは打って変わって、泣いていたはずの空も今は泣きやんでいる。 先月とは違って随分我儘になったものだと苦笑しつつも、蒸し暑いアスファルトの上をゆっくりと歩いていた。 向かう先はたった一つ、あの場所以外にない。 「よう、やっぱりここだったか」 声をかけたその先、振り返って見えたその顔は。 俺が今まで生きてきた中で一番見てきた顔だった。 そんな顔をしている彼女の隣に、ゆっくりと座った。 「……やっぱり、私を見つけるの得意だね」 「まあな、蓮子だし」 その言葉の意味は、俺と蓮子だけが理解している。 隠れたつもりだろうと、俺は分かっているから。 きっとどこに隠れても、見つけられる自信がある。 「あはは、じゃあ今私が考えていることも分かる?」 「そうだな……………」 少しだけ悩む素振りを見せて、ゆっくりと口を開いていく。 実際のところ、もう考えなくても分かっているんだけど。 「明日の結婚式、か?」 俺は明日、宇佐見蓮子と結婚する。 この川岸で出会い、隣人で大学の同級生だと知り、悪友のような関係から恋人へと変化していった。 そして大学を卒業して社会人へ。 別々の道を歩み始めて落ち着き始めた頃を見計らってプロポーズしたのだ。 そうしてその後の手続きを済ませ、あと十時間も経たないうちに結ばれる。 いうなれば今日は、結婚前夜だ。 「やっぱり隠し事も出来ないか、流石だね」 「どれだけ一緒にいると思っているんだ…………これを言わせたいんだろう?」 笑みを浮かべつつ蓮子を見ると、やはり笑っていた。 蓮子は隠し事は出来ないと言っていたけれど、それは俺も同じなんだろう。 ほら今だって、彼女が聞きたい言葉が分かるから。 「うん……………その言葉を聞くと安心する」 「言わなくても分かるのにか?」 「……………いじわる」 ははは、と一声笑う。 ちょっとだけ機嫌を損ねてしまった彼女に対して、俺は一言だけ告げる。 「好きだから、意地悪したくなるっていうのは駄目か?」 「………………ばーか」 帽子を目深に被って、表情を見せないようにしていた。 けれどそれも無駄だ、見なくてもどんな顔をしているかくらいは分かる。 先ほどの罵倒も、全部照れ隠しだと。 「………私をいじめて楽しい?」 「うん」 「………なんでこんな奴好きになっちゃったんだろ」 明日花嫁になる人間とは思えない爆弾発言。 まあそれでさえも、冗談だと分かっている。 「酷いな、それも全部自分が悪いんだろ?」 「………ふん、知らない」 「機嫌直せよ」 目深に被った帽子を更に抑え込んでぐりぐりと撫でまわした。 頭一つ分くらい違う身長差から、それを行うのは簡単だ。 もう何度繰り返したか分からない行為。 「…………うん」 それで納得したのか、蓮子は機嫌を改めてくれた。 ゆっくりと、蓮子が口を開いた。 「最初に会ったのも、ここだったよね」 「ああ、確かいきなり喧嘩になったんだよな」 出会ってから数十秒でいきなり友好度ゼロというスタートで始まり、なんやかんやあって車に轢かれそうになった彼女を助けた。 そして次の日、アパートから出てみれば彼女が隣の住人だったというわけだ。 「飛ばされた帽子を拾ってくれたのも、ここだったよね」 「あの時は寒くて死ぬかと思った」 散歩中に蓮子と出会い、強風で飛ばされた帽子をキャッチ。 ただ運悪くその落下地点が川の中であって、その後風邪を引いたのはお約束というべきか。 病院に連れて行かれたり、その後友人にからかわれたりもしたか。 「最初にキスしたのも、ここだったよね」 「そうだな、俺のファーストキスを奪われたわけだ」 今まで過ごしてきて、助けてもらった"お礼"としてキスを頂いた。 けれどその裏に隠されたものは、全く別のものだった。 それを否定されて、酷く惑わされたもんだ。 「告白したのも、その返事をもらったのもここだったよね」 「すげー勇気出して言ったんだぞ?心臓が破裂するかと思った」 彼女の行動が何故なのか問い詰めて、その答えを受け取って。 そして"行動"ではなく"言葉"で今度は想いをぶつけられて。 俺はそれを全力で打ち返して。 お互いの思いを通じ合わせた。 「………でもね」 「ずっと考えてたんだ、私の隣に立つ人は誰なのかって」 「私って女らしくないってよく言われるからさ、きっと無理なんじゃないかって思ってた」 「でもさ、そんな私にも一人だけついてきてくれる人がいた」 それは間違いなく、俺のことだ。 どんな時だろうと蓮子と一緒にいた。 喜怒哀楽を共にしてきた仲だから。 そしていつの間にか、俺は蓮子を知らない間に好きになっていた。 きっと、向こうも同じだ。 「不安なんだ、きっとまた私はその人を困らせるから」 「先が分からなくて怖い、すごく怖い」 「嫌われちゃうんじゃないかって、いつか置いていかれるんじゃないかって」 それは未来が不透明なことからくる不安か。 大切なものを、失うことへの恐怖か。 「どうしよう、もう分かんないよ」 「――――――――――――――――私、結婚していいのかな?」 そんなこと、始めから答えなんてひとつしかない。 「いいだろ」 誰がどう言おうと、俺は蓮子を取りに行く。 たったそれだけの話だ。 「後にも先にもお前だけだ、それ以外は知らん」 「ここから先なんて誰も知らないさ、分かるわけないだろ」 特別な力を持つ人間じゃない。 この世界の理を理解するような天才でもなければ、悠久の時を生きる妖怪でもない。 ごく普通に生きている、ただの人間だ。 皆誰しもが、そうやって生きている。 未来を見ないで。 「いいじゃないか、それでも」 「俺は、蓮子と一緒の未来が見たいんだ」 「もう一度言うよ」 「――――――――――――――宇佐見蓮子さん、俺と結婚してください」 プロポーズと同じ言葉を、もう一度。 「――――――――――――はい」 帰ってきた言葉は、あの時と同じで。 やっぱり考えていた通りだった。 春から夏へ。 今の時期といえば、そんな言葉がぴったりだろう。 春の陽気から、一気に真夏のように暑さに変わり果てていくその様を見て恨めしいと思う人も多いはずだ。 長袖から半袖へと服装を変え、猛暑を記録することもある。 それでありながら梅雨の季節であり、雨が降ったあとの湿度の高さからくる蒸し暑さといったら堪らない。 そんな日が繰り返されれば、寝るのにも一苦労だ。 おまけに祝日の無い月でもある、今を生きる人たちにとっては死活問題かもしれない。 きっと、この月が一年の中で地獄だと思う人も多いだろう。 ただ、俺たちにとってはこの月こそが最も大切なものだけど。 「今日は晴れたか」 一週間前は、雨続きでどうなるか不安だったのだけどなんとか収まってくれたらしい。 いつか見た、晴々とした空が広がっていた。 今日は、いい日になる。 ――――――――――いや、いい日だ。 「あら、中々男前じゃない」 「……ありがとう」 振り向いたその先には、一生頭が上がらないであろう人物が一人。 俺たちの仲を取り持ってくれた、蓮子の親友。 「メリー、蓮子のところにはもう行ったのか?」 「ええ、後はあなたがどうなのかを見に来たのよ」 すっかり様変わりしてしまったメリーを見て思う、かつてあの夢で見た女性に更に似てきていることに。 知らない彼女と一緒に歩いていた、あの時の夢と同じく。 ひょっとして、だとは思うけれど。 実はそうなる未来もあったんじゃないかって思う。 彼女は妖怪で、俺はそこに迷い込んだ外の人間で。 種族の違う俺達だけど、それでも一緒になろうと頑張るというお話。 「蓮子、凄く綺麗だったわ」 「そうか、それは楽しみだな」 ただ、それが本当なのかは分からないし、これからも知る必要は無い。 例えそうだったとしても"蓮子を選んだ俺"には、関係の無い話だ。 "夢の向こう側の彼女の片割れ"は別人だ。 どれだけ似ていても、ここまで辿ってきた足跡が違うならば。 それはきっと、"自分に良く似た誰か"だから。 「そろそろお時間ですよ」 スタッフの方が俺に向かって一言かけてくれた。 さて、向かうとしますか。 「お幸せに」 「おう」 片手を上げて、ドアの向こう側へと進んでいく。 そして、部屋を出るその時。 「さよなら、"誰か"さん」 いつか、喫茶店で分かれる時に聞いたはずの言葉を。 …………もう一度、聞いた。 今なら、その言葉の意味が理解できる。 「その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め 、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」 「「はい」」 今日は、結婚式。 愛しい隣にいる彼女との結婚式。 ずっと待ち望んだ、彼女を我が物とするために。 「では誓いのキスを」 ジューン・ブライド。 この時をどれだけ待ち望んだことやら。 「―――――――――ん」 お待たせしました、花嫁さん。 まだ見ぬ未来へ、歩きましょうか。 「私、今とっても幸せ」 いつもよりもより綺麗に見えるのは、化粧のせいか。 あるいはこの場に飲まれているからか。 それとも本当に綺麗だからだろうか。 きっと、全部そうだろう。 「そうか」 「俺もだよ」 目の前で微笑む彼女は、俺の物。 祝福の声とともに、今歩き出していこう。 未だ見えぬ未来へと。 『お幸せに』 この世界のどこか、はるか向こう側から。 そんな言葉が、また聞こえた。 今度こそ、俺も応えよう。 『ありがとう、そっちもお幸せに』 向こう側の彼女は驚いたような顔をして。 ふっと、笑いかけてくれたような気がした。 彼女の隣にいる男の手を取って、徐々に離れていく姿を見て。 『さよなら、メリー』 『そして、"誰か"さん』 向こう側でも、元気でな。 蓮子と共に、恩人に手を振って別れを告げた。 「行こう、蓮子」 「うん」 「よろしくね……………あなた」 一寸先さえ見えない世界へと、一歩足を踏み出した。 Megalith 2012/06/04 ───────────────────────────────────────────────────────────
https://w.atwiki.jp/obutsu/pages/27.html
履修カードを知らない慶応大学生 364 名前:最低人類0号[sage] 投稿日:2008/08/07(木) 07 32 18 ID zmwLkKvx0 362 結構あちこちに沸いてるみたいだな。 ttp //www.google.com/search?q=BE 575985964 num=50 hl=ja lr=lang_ja safe=off filter=0 365 名前:最低人類0号[sage] 投稿日:2008/08/07(木) 07 46 39 ID BvW6/Uh60 364 やっぱり鉄拳やタツカプ、ビルダーにも湧いてるなあ つうかそれより問題なのは、慶応のスレに結構入り浸ってることか 俺慶応ってもっと学業中心の硬派な学校だと思ってたけど、BE如きが1浪して入れるくらいレベル低かったのか… 368 名前:最低人類0号[sage] 投稿日:2008/08/07(木) 08 21 17 ID u3MFnSmG0 365 281 :学生さんは名前がない:2008/04/15(火) 22 12 31 0 BE 383990944-2BP(30) 266 履修カードってどんなん? 慶応生(つか大学生)なら知ってるだろう事を知らないあたりからお察しくださいw
https://w.atwiki.jp/playerlist/pages/105.html
CN HN 永遠に大学生 ◆z9Z8jYImug アイコン色 追加アイコン 初参加番地 ~ びっぷ村 ~ 7166番地 HN一覧 永遠に大学生 永遠に大学生 ◆z9Z8jYImug 初参加番地 本人がブログで初参加は~ 深夜VIP村 ~ 6311番地(HNはポールマッカニート)だったと書いている。 おすすめログ 番地 CN 役職 一言 21484番地 オーザック 人狼 3-1信頼勝負、真が●を引くまでに狩人を探して霊能を噛む進行 人狼勝利 28426番地 くじら軒 人狼 信頼勝負、身内切り後霊能噛みでGJを貰う 人狼勝利 略称であるEDについて 永遠に大学生氏がGMを務めていた~ 突然死厳禁!普通村 ~ 9110番地の前日にて、おねい氏(おーさか氏)が ◆おねいさん 「あーもしかしてGMはE&Dさんかな?間違ってたらごめんなさいw」 と「永遠に大学生」を略してみたのがすべての始まりだと思われる。 ◆ゲームマスター 「E&Dって俺のことかwわからなかった」 ◆おねいさん 「略してEのDだと万一隠したかったときばればれだし、これ以上訳しすぎるとやべーかなと思いましてw」 ◆おにいさん 「ED・・・(ボソ」 ◆おねいさん 「アレで言葉を濁したのにーw(`・ω・´)>おにいさん」
https://w.atwiki.jp/daigakuseigo/
大学生語wiki へようこそ! 大学生の方も大学を卒業してしまった方も是非編集してください! まずはこちらをご覧ください。 @wikiの基本操作 編集モード・構文一覧表 @wikiの設定・管理 分からないことは? @wiki ご利用ガイド よくある質問 @wiki更新情報 @wikiへのお問合せフォーム 等をご活用ください アットウィキモードでの編集方法 文字入力 画像入力 表組み ワープロモードでの編集方法 文字入力 画像入力 表組み その他にもいろいろな機能満載!! @wikiプラグイン一覧 @wikiかんたんプラグイン入力サポート バグ・不具合を見つけたら? 要望がある場合は? お手数ですが、お問合せフォームからご連絡ください。
https://w.atwiki.jp/dangerousss4/pages/239.html
希望崎大学生の日常風景 「う~帰宅帰宅」 今日の講義が無事終わり、漫拳の活動も休みな為帰宅中の俺はどこにでもいる大学生。 強いて違いをあげるとすれば希望崎大学には魔人が多めにいるって事カナー。 そんな俺の名前は澤。梶原さんのブレーンを務めている。 「むむっ、強烈なアホの気配、梶原さんか!?」 アホの気配を感じた俺は立ち止まって周囲を確認する。 知的デメリットスキル【アホLV-2】持ちが疑われる梶原先輩に絡まれると 俺の休みが台無しになってしまう。俺は注意深くアホの気配の方向をチラ見する。 ───── < ≦;;;;;;;;;;;;{乱};;;;;;;;;≧ュ / <;;>-‐  ̄ ‐- / /;;;/ > \ / /;;;;; / \ .;;;;;;;;/ l l l il l l l ム.l l;;;;;/ ! .ト-=十l `廾十一 |;;;;ハ | γ o ヽ v イ γ o ヽ / ;;;;l | .ト .! ! / .!イ i| / .ムマ.∨ ゝ|__| l___! i .ハ | r、fヽ i| ト _≧ ____ ムイ リ ,、 ,.、 ∧ ! | .| | }―─ 、 l ./ i| ヽ l レ / / ゝ⊂ヽ | |\ ヽ / イ .┬┬ っム / `ー ィ .≧ | !‐-> 。。o< .| . ∧ | |_ ノ ./ ヽ__ノ/ { ル .ニニム  ̄ 〕ニニニル l ! ! .ヘ ゝ─ ´ <ニニニヽ ー─‐‐/ニニ> ´  ̄ ̄ . .! x-─── 、ニニニ>‐‐イニニlニニニ≧ ュ l 人∧ ∧ 〉ニニニ< ニニニニニニニニニ!ニニニニニ〈 ∨ マ ./ 〉ニ< ム.ニニニニニニニニニム <ニニ/ ./ }レ  ̄ /.ニニニニニニニニニニニム从仆人ル /ニニ>、ニニニニニニニニ.ム /ニ>´ マニニニニニニlニ.ム />´ 、 マニニ∧ニニニ! ノ ○ r‐ ヽ___ マニ/.__マニニ|ー´ / ̄ヽ ヽノ / ̄ ̄\ ゝ __ノ ヽ _ ノ / ̄ ̄ ̄` γ  ̄ ̄ ̄ ̄ヽ ゝ ___ ノ 八____ ノ 【アホLV-2】の正体はツマランナー先輩(希望崎大学4年生、軽音サークル所属、男)だった。 黙ってれば見た目は美人なので過去に何度かキャラ絵のモデルしてもらった事がある。 魔人能力でブーストしたんだろう、すっごい速度で俺の前に回り込んで来た。 梶原さんが集中線で加速して俺を捕まえる時に匹敵する動きだ。はい、捕まりましたとも。 「澤君、暇やんな?数分付き合え」 「先輩は暇なんですか?歌手デビューが決まってから大学にはほとんど来てなかったじゃないですか」 「ああ、ちょっと色々あってな・・・。今バンドは休んどるんよ」 珍しくツマランナー先輩は暗い表情を見せたがそれも一瞬の事でまた綺麗な顔をして俺の目を覗き込んでくる。 やめて下さい、変な気分になってしまいます。 「まあワイの事情はええやん、希望崎大学のスピードワゴンの異名を持つ澤君にワイの魔人能力のチェックを お願いしたいんやけど、澤君に害は無いし数分で終わるから」 「はあ、数分なら」 ジャーン! 俺の了承を得ると同時にツマランナー先輩はベースを大きく鳴らしパンチラした。色は黒だ。 「聞いて下さい『ツッペルランナー』」 「ワン、ツー、ワンツーさんし」 ジャカジャカジャカジャカ 「世界のどこかにいるという~、自分と同じ見た目の人が~、 ドッペルゲンガーと言うらしい~、それじゃあ私のそっくりさんがいたら~」 ジャカジャカジャカジャカジャン! 「ツッペルランナーだね~、ツルペタ言うな~、ツッペルランナーカモン!」 ジャーン! 一曲弾き終ると同時にツマランナー先輩が二人に増えた。先輩の魔人能力はギャラリーの見えてる場所で 一曲歌うとそのタイトルに合わせた効果を発揮し、自分を強化したり何かを召喚したりできるというものだ。 「おおー!凄いっすね。自分のコピーも出せるんですか!!」 「ワイの能力出力で出せる多分限界値、それがワイ召喚や」 以前に先輩は転校生級・EFB級の事は出来ないって言っていた。 確かに自分単体召喚あたりが限度なのだろう。 「三十秒経つか能力を再使用すると消えちゃうし、簡単な命令しか受け付けんけどな。 澤君に確認して欲しいのはここからや。ツッペルランナー、さっきの曲リピートできるか?」 「一つの曲までなら行ける思うで本体!」 ジャーン! 先輩のドッペルゲンガーは先輩と全く同じ様に演奏を始める。パンツの色も黒だ。 「聞いて下さい『ツッペルランナー』」 「ワン、ツー、ワンツーさんし」 ジャカジャカジャカジャカ 「世界のどこかにいるという~、自分と同じ見た目の人が~、 ドッペルゲンガーと言うらしい~、それじゃあ私のそっくりさんがいたら~」 ジャカジャカジャカジャカジャン! 「ツッペルランナーだね~、ツルペタ言うな~、ツッペルランナーカモン!」 ジャーン! ドッペルゲンガーの演奏が終わると横に二体目のドッペルゲンガーが出現。 それを見て、本物の先輩は両手を上げてキャッキャと喜んでいる。可愛い。 「よっしゃー!ツッペルAまだ消えとらん!大成功やー!わーい!」 「なんや知らんけど本体が喜んどる!わー・・・い・・・」 三十秒が経過したからだろう、最初に生まれた方のドッペルゲンガーが消滅する。 「よしよし、Aが消えてもツッペルB健在やな、そんじゃB、さっきの曲リピート!」 「はいなー!」 ジャーン! やはり同じように演奏する、パンツは黒い。 「聞いて下さい『ツッペルランナー』」 「ワン、ツー、ワンツーさんし」 ジャカジャカジャカジャカ 「世界のどこかにいるという~、自分と同じ見た目の人が~、 ドッペルゲンガーと言うらしい~、それじゃあ私のそっくりさんがいたら~」 ジャカジャカジャカジャカジャン! 「ツッペルランナーだね~、ツルペ・・・あ、時間や。ほなな」 最後まで演奏する事なく二体目のドッペルゲンガーは時間制限で消えた。 一体目の時と違って、本体がキャッキャしてた分、命令が遅れたからだろう。 最後まで演奏出来なかったから三体目は出現しない。 「いやー、いいテストになったわ。ありがとな澤君」 「いえ、俺はただ見てただけですから」 「それが必要やったねん。今ワイが信じられるのは大阪の家族除いたら澤君ぐらいやから。 お礼に熱いキッスを!」 ツマランナー先輩は俺の頬にキッスして去っていった。 一体何だったんだろう。分かった事と言えば、先輩のドッペルAが消えてもドッペルAが 呼び出したドッペルBが三十秒存在した事から先輩の能力は発動さえしてしまえば 死亡非解除っぽいという事、それから先輩がバンド仲間と上手く行ってなさそうな事ぐらいだ。 ツマランナー先輩の行動と残り香に集中しながらゆっくりと帰宅していたせいだろう。 俺はもう一つの【アホLV-2】の接近に気付かなかった。 「よう澤、突然で悪いが付き合え」 肩にゴツイ手をポンと置かれる。 「げぇっ、梶原さん」 「ちょいと練習台になってくれや、訳あって画力を磨いておかねばならなくなった」 ギィィとペンを噛みしめながら、これから人を殺しに行く様な修羅の笑顔で梶原さんは俺を誘う。 こんなの断れるわけない。やれやれ、今日の自炊と洗濯は諦めるか。 (終わり) このページのトップに戻る|トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/kagamin_bocchi/pages/115.html
ぼっちの大学生にありがちな考え かがみ「どうすれば、ぼっちから脱出できるのかしら・・・・・」 かがみ「そうだわ!!思い切ってイメチェンしてみよう。」 かがみ「口紅、化粧、マスカラっと!!服も派手なやつ買ってこよう!!」 かがみ「よし!・・・・これで明日から私もクラスの人気者だわ!!」 そして、更に孤立するかがみ(いますよね?こういう人)
https://w.atwiki.jp/zishuren/pages/25.html
364 名前:最低人類0号[sage] 投稿日:2008/08/07(木) 07 32 18 ID zmwLkKvx0 362 結構あちこちに沸いてるみたいだな。 ttp //www.google.com/search?q=BE 575985964 num=50 hl=ja lr=lang_ja safe=off filter=0 365 名前:最低人類0号[sage] 投稿日:2008/08/07(木) 07 46 39 ID BvW6/Uh60 364 やっぱり鉄拳やタツカプ、ビルダーにも湧いてるなあ つうかそれより問題なのは、慶応のスレに結構入り浸ってることか 俺慶応ってもっと学業中心の硬派な学校だと思ってたけど、BE如きが1浪して入れるくらいレベル低かったのか… 368 名前:最低人類0号[sage] 投稿日:2008/08/07(木) 08 21 17 ID u3MFnSmG0 365 281 :学生さんは名前がない:2008/04/15(火) 22 12 31 0 BE 383990944-2BP(30) 266 履修カードってどんなん? 慶応生(つか大学生)なら知ってるだろう事を知らないあたりからお察しくださいw
https://w.atwiki.jp/kokohaza/pages/36.html
【名前】八坂 秋亮(やさか しゅうすけ) 【性別】男 【年齢】19 【職業】大学生(1年) 【性格】良くも悪くも、真面目 【口調】誰に対しても敬語、おどおどしている 【容姿】ぼさぼさの茶髪にそばかす顔。全体的にひょろ長い 【好き】読書、妖怪、茶碗蒸し 【嫌い】押しの強い人、塩辛 【趣味】読書、旅行 【服装】緑や灰色などの落ち着いた色の服装を好む 【備考】 ギャルの従兄弟で、どこにでもいる普通の大学生。 ギャルを妹のように思っているがパワーバランス的には圧倒的に負けており、性格も全くの正反対でおとなしいため逆に心配される。 たまには年上らしく振舞おうとするが大抵失敗してしまう。メンタルが弱く、そのうえモヤシ。高所・閉所・暗所恐怖症持ち。 ひ弱な自分を変えようと日々努力はしているものの、空回り気味。 妖怪のことになるとテンションが上がり豹変して、周りが見えなくなる。その豹変ぶりはギャルも圧倒されるほど。 幼い頃は妖怪探しのために様々な奇行を繰り返していたらしい。
https://w.atwiki.jp/daipoke/
大学生板ポケモンwiki ____ / ヽ _ i´ ̄( ̄/ー- ヽ  ̄) ゝ (・)-o-(・) \ |\ | / ̄\ | (_ (__人__) ) | | \ | | │ \  ̄ i__i__i / | \| \_/ ノ ̄`ー、__,-‐´\ .n n nn | | | | ̄\ | ̄ ̄ |\ | nf||| | | |^!n ├─-┤ | | | ├─- | \ | f|.| | ∩ ∩|..| |.| | | | |_/ |__ | \| | ! } {! | ヽ ,イ ヽ イ 本サイトは、ニンテンドーDS用ゲームソフト 『ポケットモンスターダイヤモンド・パール』の 2ch.netの大学生板の大学生による相互情報交換所です。 wikiなので誰でも自由に投稿編集して下さい ※メニューを変更する場合は ページ一覧→メニュー→このページを編集、で変更できます。 ※誰でもページ追加が可能です。編集ロック部分は(多分)ありません。 ■wikiリンク ハートゴールド ソウルシルバー攻略wiki ポケモン対戦考察まとめwiki マイナーポケモン対戦考察まとめwiki ポケモンwiki ポケットモンスターwikipedia 【『ポケットモンスターハートゴールド ソウルシルバー』公式サイト】 http //www.pokemon.co.jp/special/hgss/ 商品情報 商品名 ポケットモンスター ハートゴールド ソウルシルバー 機種 ニンテンドーDS ジャンル RPG 発売元 株式会社ポケモン 開発元 ゲームフリーク 発売日 2009年9月12日 価格 4800円 実験的に運用していますが 問題があったり、他に良い機能するpageがある場合 その都度本pageを変更・削除します
https://w.atwiki.jp/daipoke/pages/5.html
第一回大学トーナメント大会結果 第二回大学トーナメント大会結果 第一回大学リーグ戦大会結果